今日も奇岩の街に帳が下りる

こんにちは。中年バックパッカー旅すけです。
いつも股旅ブルースをお読み頂きありがとうございます。

世界を股にかけて旅する股旅ブルースでは僕がこれまで訪れた海外のグルメ情報、街歩き、観光、現地の暮らしなどをご紹介して行きます。

前回、メテオラ修道院にて暴飲暴食を反省し、節度を誓ったのですが
即刻ギロピタの誘惑に負けて、また食べてしまうのでした。
今回は夜のカランバカを旅します。

旅人を惑わす、ギリシャのサガナキとは・・?

ギリシャに旅立つ前、
ある女性から意味深な言葉をかけられた。
〝サガナキに気を付けて・・・。〟

サガナキ?
サガナキとはなんだ・・?
馴染みのバーカウンターで煙草をくゆらせながらバーボンを一口。
ランタン祭は華やかだし、ちゃんぽんも美味いよね!
それ、長崎。
関白宣言や北の国からはいつ聞いても名曲!
それ、さだまさし。
今日は部長の機嫌が悪いから大人しくしとくよ。
それ、触らぬ神に祟りなし。
ほとんど字違うし!

言葉はまるで透明な水の中に墨汁を一滴たらし、じんわりとその色が広まるかのように私の心を儚く染めた。
一抹の不安を残しつつ私は日本を後にするのだった。

アテネからの道中、全く気にならなかった訳ではない。
コートのボタンを留める時、埠頭で汽笛が沁みる時、雪降る街で捨て猫を抱きしめた時。
ふっと脳裏を掠めたがやがて紅茶に沈めた角砂糖のように跡形もなく消えてなくなるのだった。
黄昏に沈むカランバカの街は彩を失ったモノトーン映画のように重くそして深い穏やかさを写している。
少年達の掛け声は私を佇ませ懐かしい感情と共に優しく包み込むのだった。

ついに遭遇!それは天使か悪魔か、果して・・。

街で一番の賑わいを見せるレストランPANELLINIOは道沿いの噴水の側だった。
なにかに魅かれた訳ではない、ただ引き込まれるように私はテラス席を選んでいた。
水の流れは騒々しくも心地よいBGMとして食事を楽しませてくれるだろう。
給仕の少年は少し幼さが残る目鼻立ちの整った顔だった。
お勧めは・・?
サガナキ。
えっ・・?
フェタチーズのサガナキさ。
では、それとチキンのカポナータを。
平静を装っていたが私の鼓動は早まり背筋が汗ばむのを感じていた。
恐怖?いや、歓喜?いや、何物でもない不思議な感情は未知なる体験を期待し走馬灯のように旅の記憶を蘇らせるのだった。
お待ちどお様。これがうちの名物サガナキだよ。
これが、これがサガナキ!!

フェタチーズがオリーブオイルと共に焼かれている。
程よくついたキツネ色の焦げ目があたりに芳醇な匂いを漂わせ、私の食欲を惜しげもなくくすぐる。
これがサガナキ。ひと口頬張ると口の中でチーズがとろけてなくなり、後にはオリーブとスパイスの香りが鼻腔を突き抜ける。
想像を超える味わい深さに感動しつつも自制が効かなくなる予感がしていた。
止まらない、美味すぎて止まらない。
あっとゆう間に平らげてしまった。

チキンのカポナータも負けてはいない。

トマトとナスの旨味がチキンに絡まって絶妙なハーモニーを奏でている。
シチリア料理をここまでアレンジ出来るのは山海の肥沃な大地が織り成す技かも知れない。
こちらもペロリと平らげてしまった。
食事を終えてただ呆然とし、
彼女の言葉を再び思い返す。
サガナキに気を付けて・・。
旅人を惑わす危険な一皿、
カランバカの夜は怪しくも暮れゆくのだった。

今回も股旅ブルース、最後までお読み頂きありがとうございました。
次回、11話 イスタンブールへ北北東の針路を取れ
をお送りします。

Platanos / Panellēnion
ΕΣΤΙΑΤΟΡΙΟ ΠΛΑΤΑΝΟΣ
Πλατεία Δημαρχείου, Kalampaka 422 00 ギリシャ
☎+302432024735/12時00分~0時00分

http://www.kalampaka.com/panellinio/index.asp