こんにちは。放浪のバックパッカー旅すけです。
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世界を股にかけて旅する股旅ブルース。
今回はついに辿り着いたガンジス川をぶらり。聖地と呼ばれる川は正に衝撃の連続。
だけどインドの男達も熱かった!!

聖地に溢れる熱気がすごい。バラナシの密集は熱気ムンムン!

仏教には「生死一如」という、ありがたいお言葉がある。
生きる事と死ぬ事は同じ事、正に表裏一体という意味らしい。
正直、僕はあまり信心深くないし、人生や死について考えた事もなく、こういう言葉を聞いてもピンと来ない。
生きてりゃ楽しい事あるし、死んじゃったら元も子もないだろうって感じだ。
恐らく、この世のほとんどの人がそうではないだろうか。
死生感なんてのは聖職者年寄りが考えるものだと思っていた。
今回、ガンジス行きを決めたのも単なる旅の好奇心であり、到達点のひとつに過ぎなかった。だが、その安易な好奇心は強烈な光景と共に打ちのめされる事となる。

バラナシ駅に着いた時、僕はとてつもない疲労感に襲われた。
十数時間の列車の旅を終えてやっと辿り着いたと思ったら、何十人ものリキシャーに一斉に囲まれたのだ。
カツアゲかと思ったほどだが、ある者は安い料金を繰り返し、ある者はしきりに手を引っ張ってきた。
あぁまたこれか・・。
すでにデリーでこの手の勧誘を潜り抜けて来たので、恐怖というよりゲンナリ感しかない、、。
もはや、蝿がたかって来るのを追い払うように大声と手で払い除けるも、リキシャー達は一斉に散るのだが、また集まってくるのだった。
僕は無視して駅前通りを抜けて、こちらの騒ぎには目も暮れず昼寝している若いリキシャーに声を掛けた。
若いリキシャーは重い瞼をこすりながら、だるそうに座席に跨る。
よく見るとヨレたシャツから伸びた腕や首は細く、これから人ひとり乗せて自転車こげるのか全く不安になるぐらい痩せ細っていた。
全体重をかけてペダルを踏み込むとリキシャはゆっくりと動き出した。

徐々に速度を上げていき雑踏の中を突き進む。
なんだか気分は明治の花魁
あらっ、この通りも花街?これから水上げされちゃうのかしら、、。
なんてインドの片隅で何言ってんだか。

しばらくすると、商店街のような通りに入った。
通りは両側に商店が並び、歩行者天国のように人々が行き交っている。

見れば、髪を振り乱したサドゥがいたり、サリーをまとった女性に、ホームレスに、山積みの荷車を引く人や地面に野菜を並べて客を待つ人。
正に多様性の極地、デリーのパハルガンジよりも渾然として俗っぽい、そんな光景が広がっていた。
適当な場所でリキシャーを止めてもらうと、道について尋ねた。
すると、若いリキシャーは通りの奥を指差し、まっすぐ行けば川岸に着くと教えてくれた。
僕は重いバックパックを背負うと、その方向に向かって歩いた。
両側には段々と、神具や仏像を取り扱う商店が目立ち始める。

なるほど、この通りは参道みたいなものか。
神聖なる仏閣に通ずる道、ガンジス川が崇高な存在である事を改めて実感した。
道は岸近くで開けており、沐浴や観光ボートに乗るために階段状に舗装されたガートにつながっている。

デリー出発から12時間、ようやく辿り着いた時、僕は息を飲んだ。

あの世への入口なのか!?ガンジス川のほとりは聖なる岸辺。

目の前に横たわるガンジス川はどぶのような暗澹たる色を含み、牙を隠した野獣が獲物を求めて彷徨うかのように緩やかに、そしてのうのうと流れていた。
ガート周辺は生臭い匂いが漂い、視覚だけでは分からないリアルな感覚を脳に刻んで来る。

岸辺では無数のヒンドゥー教徒が裸になって汚水に浸かり、ある者は体を洗い、ある者は一心に祈っていた。
そして、物体というのか、死体というのか、生を全うした生き物が川面に浮かび、上流から下流へと流れてゆく。

そこは雄大や畏敬と言うよりも一種、異様な世界で常世と現世の境界と言われる所以を感じざるを得なかった。
湧き立つ鳥肌を感じながら、僕はその光景を脳裏に焼き付ける為、ずっと川を凝視していた。というよりも、あまりの衝撃にその場を離れる事が出来なかったのだ。

ガンジス川沿岸は遥か彼方まで続き、ガートが所々にあった。
近くには火葬用の薪の山が積まれ、未だ絶えぬ煙を細々と吐き出している。
あぁここで幾多の死体が焼かれ、川に流されているのか
ぼんやり見ていると、今また木綿に包まれた死体が神輿のように担がれて薪の上に安置された。
火は勢いよく燃えあがり身体を包み込む。付近に漂う異臭、僧侶の声、またひとつ生が終わり川というあの世に送られる。
聖なる行いはこの決して衛生的とは言えない場所で日々繰り返される。
それは神々しいとしか思えない情景だった。
日本で語られる三途の川の概念も、ガンジスから来てるんだろうかな。

火葬場横でその様子を見ていると、言い合いする激しい声が聞こえてきた。
見れば10人ぐらいの男たちが集まっている。
中心では2人の男が言い合いしていた。
男たちは徐々に声高になり、そのうち殴り合いの喧嘩になった。
おいおい、火事と喧嘩は江戸の花とはよく言いましたが、まさか火葬場で殴り合いとは!?
さすが、インド人は激しいな。
殴り合う男達に、止める男達。
背後には燃える炎と焼ける死体。
神聖な場所かと思ったら急に俗っぽくて、あぁやっぱりここはインドなんだなぁ
なんて山下清画伯のように感動するのだった。

ダシャーシュワメード・ガート
Dashashwamedh Ghat
Dashashwamedh Ghat Rd, Ghats of Varanasi, Godowlia, Varanasi, Uttar Pradesh 221001 インド
https://kashiarchan.in/dashashwamedh-ghat/

ガンジス川へ下りる賑わいある階段。毎日の宗教儀式に使用される。