こんにちは。放浪のバックパッカー旅すけです。
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今回はラダック最大、へミス・ゴンパツェチュを見に行きます。宗教と文化が根付いたラダック、初体験のツェチュは感動の連続でした。

へミス・ゴンパはインダス川を越えて。ツェチュは胸踊る祭典だった。

ラダック2日目、カーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚めた。
天気は快晴だし、高山病の影響もなく体調も申し分ない。ツェチュ観覧には最適な日だ。
身支度を済ませるとロビーに下りた。
ロビーではガイドのスカルマさんがソファに腰掛けて待っていた。
ロビースタッフに軽く挨拶してチェックアウト。
今日のツェチュとゴンパ巡りの後は、そのままホームステイ先に滞在するので、バックパックを車に載せてもらい僕は助手席に座った。
スカルマさんの運転する車は徐に発車すると、市街地を抜けものの数分で山間地域まで辿り着いた。

どこまでも続く荒涼とした大地、木や緑のない山々は正に別世界。
昨日までのレーの繁華街にいると、ラダックである事を忘れてしまうが、改めてここがインドの僻地である事を実感した。
まだ午前中だというのに、照りつける太陽が激しい。
今日も日中は酷暑になりそうである。
気づけば道沿いに川が流れている。大河という程ではないが、幅200メートルぐらいの浅い川が山の間を縫うように横たわっていた。
あれが四大文明で有名なインダス川だとスカルマさんが教えてくれた。
インダス川ラダック・ザンスカール地方を源流としてパキスタンカラチまで流れる。
その長さ3,180キロパキスタン最大の河川でもあり、その流域では文字や青銅器等の高度な文明が発見されている。俗にいうインダス文明であった。
インダス文明といえば、モヘンジョ=ダロの都市遺跡が有名だろうか。
まさかラダックの旅で、そんな世界史で勉強したような名河川に出会うとは思わなかった。
旅先のラーメン屋で大仁田厚に出会えったような気分だった。

程なくすると、道沿いや山肌にタルチョーが目立ち始めた。
はためくタルチョーはカラフルで殺風景だった景色を彩ってくれる。
川向こうの山間部に白い建物が見えた。
川を越えると、それはハッキリと認識出来、それがツェチュの開催場所であるへミスゴンパである事は明らかだった。
自動車やバス等の車両が徐々に混み合い、寺院に続く道沿いも観覧客の列が連なっている。
駐車場に車を停めると、寺院に向けて登り始める。
道沿いは参道のようになっており、出店もあって賑やかしい。
子供向けの玩具屋なんかは手作りの木製の物もあったりして、なんだか昭和日本の縁日みたい。
地元の人々にとっても、ツェチュは年に一度の楽しみなんだろうな。
寺院の入口は重厚な門が設えてあって、そこを抜けると広い会場に出た。

そこは、周囲を寺院の建物で囲まれており、真ん中には国旗を掲揚するための設備いくつかあった。
建物はどれも3〜4階構造で白く学校の校舎のようだ。
所々が華麗な装飾で飾られており、本堂らしき建物の頂上からはかつての大僧正だろうか、巨大なタンカが掲げられていた。

会場はロープで仕切られており、要所要所で警察官が警備の為に立っている。
僕は会場の近くの席に座らせてもらった。
周りは観光客だけでかなりのアリーナ席だった。

高僧の偉大なる教え。目眩くパフォーマンスは人生の指針

開演を待ちわびていると、どこからか角笛のような、ホルンのような深く勇ましい音色が会場に響き渡った。
見ると、舞台袖で正装した僧侶2名が巨大な笛を奏でていた

それはチベタンホルンと呼ばれる楽器で、背丈程もあるせいか先のホーン部分を地面に設置して吹き上げるものだった。
その音色が響き渡ると更にシンバルやドラムのような楽器も続き、僧侶たちの読経のような唄声も聞こえてきた
すると、寺院内から数人の僧侶たちが現れ、国旗掲揚台の周りを囲んだ。

彼らは祭り用の衣装に身を包み、冠のような制帽を被っている。
制帽や衣装に縫われたドクロは死生観の象徴だろうか、音楽に合わせて舞いながら周囲を回っていた。
ツェチュではチベット仏教ニンマ派の開祖、パドマサンババの生涯を躍動感溢れる踊りと音楽で再現するチャムが見どころ。
チャムには黒帽の舞や、閻魔の裁き等様々なテーマがあるのだ。

最初の踊りが終わると、次は頭の2倍程もあるような仮面を被った数人が観覧席近くを巡る。中心にいる黄金の仮面の人こそ、パドマサンババだろうか。
ゆっくりと演技しては戻って行った。

最後は3〜4人の衣装を着た演者が色々な仮面をつけて舞う。
1人は僧侶、1人は悪魔?1人は猿のような着ぐるみ
ちょっとコミカルだけど、これも仏教の教えを地元の人々に伝える重要な舞なんだろう。

見ると、会場脇は観覧に来た外国人が多いのだが、寺院のベンチや2階席には地元ラダックの人々も家族連れで見に来ていて、なんだか微笑ましい。
あぁこんな過酷な地域でも人々の営みは絶えることなく、そんな中で行われる祭事は年に1回の楽しみでもあるんだな。
とかく現代では見た目の派手さや珍しさばかりが注目されて、昔ながらの伝統が失われがちだけど、求めなければ馴染みのお寺でいつものパフォーマンスでも充分人々の心に残り続けるのだろうな。
インドの秘境ラダックで改めて考えさせられてしまうのだった。
へミス・ゴンパよ、ありがとう。

ヘミス・ゴンパ
Hemis Gompa
〒194201 ヘミス
Hemis 194201