談笑する人々すらも絵画のように風情がある街角

こんにちは。中年バックパッカー旅すけです。
いつも股旅ブルースをお読み頂きありがとうございます。

世界を股にかけて旅する股旅ブルース。
前回まで、アイト・ベン・ハドゥの散策で遠いモロッコの歴史に思いを馳せるも、昼のランチ代未払いが発覚し危うく投獄されそうになる中年バックパッカーなのでした。
今回は次の都市ワルザザートからダデス渓谷まで移動します。

映画とバラと星空と。カスバ街道の旅

世界遺産アイト・ベン・ハドゥを後にした一行は、一路ワルザザートへ。
ワルザザートは人口56,000人のモロッコ南部の都市。
アトラス山脈の南側に位置し、山から流れるドラア川沿いにあるため、古くから砂漠のオアシスとして発展して来た。また、幹線道路沿いにあるため、交通の要衝でもありサハラ砂漠観光の玄関口としても知られている。ここから東部の街エルラシディアまで続く道沿いには、城塞都市カスバやクサルが多く点在しているためか俗に“カスバ街道”と呼ばれている。

実際、ワルザザートの市内にもタウリルト・カスバなる集落がある。17世紀の豪族が所有していたらしいのだが、大幅に修復されたらしく、趣はアイト・ベン・ハドゥには劣る。中は迷路のようだし、住人の方がモスクで礼拝されていたりするので、カスバの暮らしを更に知りたいのであれば足を運んでみるのもいいだろう。ちなみにこちらも映画『シェルタリング・スカイ』の撮影が行われた事でも有名である。
この映画、作者のポール・ボウルズが出演しているのだが、彼もまたモロッコに魅了され永住を決断した外国人の一人だ。他にもデザイナーのイヴ・サンローランやロック歌手のジミ・ヘンドリックスなど多くの芸術家たちを虜にしてきたモロッコ王国。北アフリカに位置するこの国は単なるエキゾチックの一言では収まらない凄まじい影響力を内包している。それは、有名な観光地や世界遺産、大自然など美しい景観から発せられるだけでなく、ひっそりと佇む路地裏や町の小さなモスクの看板、ミントティー片手に談笑する人々からも波動のように感じられる。もしかすると、古来からのアフリカ人やベルベル人、ヨーロッパ人ら多人種の調和が洪水のように織りなしインスピレーションとして現代の私たちに伝わっているのかも知れない。

話はそれたが、そのワルザザートから北東のダデスまでの行程。
市街地を抜けるとカスバ街道沿いは山岳地帯から小さな街々へと移り変わる。モロッコの地層特有の赤土色のレンガが街並みを深いピンク色に染め、時刻によっては鮮やかな褐色にも変化させる。ドラア川沿いをひた走るとバラの産地で有名なムゴナと呼ばれる街がある。ムゴナはモロッコの名産品ダマスクローズの産地であり最盛期5月には街道沿いの畑にバラが咲き乱れ、通称”バラの谷”と呼ばれる。2月現在はシーズンオフの為、美しいバラの風景や生花を楽しむ事は出来ないが、精製されるローズオイルやローズウォーターは街道沿いの土産屋で販売されている。アマールの休憩がてら立ち寄るが、中年男性とバラ・・。別段興味がある訳もなく、早々に出発する。

ワルザザートを出てから2時間、道は高度を上げ右手に大きな渓谷が見え始めた頃、ダデスに到着した。
ダデスは峡谷沿いにオアシスとベルベル人の集落が点在する地域でカスバ街道の中継地でもある。特にダデス峡谷はトドラ峡谷と並び、奇岩が並ぶ景観やトレッキングコース等からも観光名所として知られている。

本日のホテルKasbar Auberge Tifawanに到着したのは、夕刻5時を過ぎた頃だった。
チェックインを済ませテラスに出てみると、なんともな絶景!切り立つ崖に建てられたホテルは峡谷にせり出し、ダイナミックな景観が目の前に広がっている!特に夕刻時は夕陽に照らされた谷沿いの集落が真っ赤に染め上がり、まるでビロード織物を一面に敷き詰めたように深紅に輝いていた。
テラスだけでなく部屋のベランダも谷沿いに面している為、この絶景を独り占め出来るのである。
う~む、今回のエージェント、中々のいい仕事!

ホテル内の食堂で夕食を済ませると夜の帳が下りていた。部屋に戻ろうとすると、ホテルのスタッフが話掛けてきた。
”テラスに出てみるといい。満点の星空が見られるから”
なんだって~!!絶対行く~!!
再びテラスに出てみると絶句っっ。これまで日本では見た事ないような大粒の星々が夜空に燦然と輝いているではないか!あぁ~星とはこんなに大きい物だったのか・・。
それもそのはず、ダデス峡谷は標高2,000メートルの高所とビルディングもない地方である為、空気が澄み日本よりも鮮明に星を見る事が出来るのだ。
星降る夜とは正にこの事、あまりの夜空の美しさにその日は遅くまでベランダで星を眺めたのだった。

翌朝、へ~っくしょん!!
夜風にあたりすぎて風邪を引くとは漫画でありがちな展開・・。のび太か!!
震えながら起きだして、朝食を食べにテラスに上がると、
絶句、再び!!朝陽に照らされた峡谷もこれまた美しい!!
真っ赤に染まった夕刻とは打って変わって、夜明けは黄金色にキラキラと輝いていた。
昨夜は気づかなかったが谷沿いには森林もあり緑も活きづいて見える。
朝に夜に様々な絶景を見せてくれるダデス峡谷、
迂闊にも、旅の経由地ぐらいしか考えてなかったが、ぜひおススメの場所である。

飯も食ったし、今日はトドラ峡谷までゆくぞ!!

今回も股旅ブルース、最後までお読みいただきありがとうございました。
次回、30話 トドラ峡谷に響くアマールの秘密
をお送りします。

Kasbah Auberge Tifawen
Km11 Gourge Dades, Boumalne 45150 モロッコ
☎+212524831854