乗客でごった返すラムセス駅ホーム

こんにちは。放浪のバックパッカー旅すけです。
いつも股旅ブルースをご覧頂きありがとうございます。

世界を股にかけて旅する股旅ブルース。
今回はカイロから寝台列車で南部の都市アスワンまで向かいます。
テンション爆上がりの寝台列車も、エジプトの駅は一筋縄では行かないようです。

カイロからアスワンへ。ラムセス駅はトラブルステーション!?

旅が好きで好きでたまらないのだが、ではどんな旅でも良いかと問われるとやはり好き嫌いや得手不得手がある。
ヨーロッパやアメリカのような先進国よりはアジアあたりの発展途上国が好きだし、ひとつの場所でゆっくりよりも限られた日数の中で転々と移動するのが好きだったりする。
移動手段もタクシーやチャーターしたバンよりもローカルバスや列車のが風情があって良い。中でも最もテンションが上がる乗り物がある。
寝台列車である。最近は事前にネットでチケットを買ってエアコン付1等車で快適に移動出来るが、出来れば駅窓口で購入した2等車ぐらいでゆっくり行きたい方だ。
車内の設備も最新ではなく、古びた毛布にギシギシと揺れる寝台、汚れた床にこそ旅の醍醐味を感じられるのだ。

そんな寝台列車大好きな僕だからカイロ〜アスワン間の13時間の旅はもうテンション爆上がりだった事は言うまでもない。
しかし、そこは世界3大ウザい国のひとつエジプト。
一筋縄でいく訳がなかったのである。

午後7:45発寝台列車に乗車する為、夕刻6時頃カイロのラムセス駅に到着した。
駅前はバス乗り場から路上販売から多数広がり、夥しい人でカオスのよう。
乗車券は事前にネットで購入しており、そのままホームに行くだけだった。
駅入口から入ろうとすると、なぜかツーリストポリスに呼び止められて、署内らしき個室に連れて行かれてしまう。
・・・は?なんだここわ・・?
中には自分と同じような欧米人やアジア人が3組程座っていた。
意味も分からず待っていると、ポリスがやって来て列車の乗車時間になったらホームに送ってやる、それまでここで待てと言う。
しかし、どうも信用ならない・・、バックパッカーの性だろうか。
と言うのも、別の欧米人とポリスが楽しく話しているのだが、いくらかエジプト紙幣を渡しているのが見えたのだ。
話してる内容はどうも観光地のガイド料について話しているようだ。
う〜む、横に併設の旅行会社と結託して、待ってる観光客相手に営業してんじゃないのか??全く!カイロ警察め!胡散臭い事この上なし!タイホするゾ!!
しかも、時間通りに連れて行ってくれるかどうかも定かではない。
僕は怒り心頭で口論の末、部屋を強行突破するとインフォメーションまで来た。
ホーム番号を問い合わせると11番だと言う。
時間もギリギリだし急いで改札を抜けるのだが、数字がアラビア文字でわからーん!!
どっちに行けばいいんだ!?
仕方なく清掃員の少年に聞くと、ホームまで連れてってくれた。
少年!めちゃいいやつ!ようやく11番ホームに到着して待つのだが、7:45になっても列車は到着しない。
近くにいた欧米人カップルに聞くと遅れているとの事。
しかも1本前の列車も遅れてるから、2本目のが乗るべき列車だと言うのだ。
恐るべし、エジプト!電光掲示板にも何も書かれてない。
何度も言うが、ここはインドではない。
時刻は15分を過ぎた頃、ようやく1本目のがホームに入って来た。
確かこれは乗ってはいけない奴だよな。
動き出した列車を見送っていると、長身のエジプト人らしき若者が走って来た。
彼は列車に乗ろうとして駅員に止められたようだ。
どうやら僕と同じ列車に乗る予定だったが、ちょうど遅延してたので2本目に間に合うようだった。
彼に話しかけると、同じ列車だから一緒に乗ろうと言ってくれた。
彼は歯科医らしく、途中のルクソールにある実家まで帰るそう。
柔和で知性的な感じに好感が持てた。

遅れる事30分、ようやく乗るべき列車がホームに滑り込んで来た。
停車すると、歯科医の彼が案内してくれて僕の車両まで連れ行ってくれた。
ありがとう、いい旅を!彼に告げると笑顔で手を振ってくれた。
よく見るとホームの奥には先程のツーリストポリスも来ていた。
案外彼も親切に送ろうとしてたのかもな。

ナイル川沿いをひた走る。13時間のエジプト縦断の旅へ

寝台列車は各々個室になっており、6部屋がひとつの車両に作られていた。
中は片側に2段ベッド、片側に洗面台やハンガーがついているが現在は恐らく機能していないだろう。

料金は1車等車で1名120USD、2名だと80USDになるようだ。
ベッドに腰掛けてゆっくりすると、ラムセス駅での一件からか緊張が解けて笑いが込み上げて来た。
構内に入れない、ポリスに捕まる、難解なアラビア文字、遅延する列車。
旅にありがちなトラブルだけど久々に緊張した。
さすがエジプト、インドと遜色ない旅レベルの高さに興奮を覚えるのだった。
そんな中でも歯科医の彼や清掃員の少年など人の親切が身に染みる。
これこそがバックパック旅行の醍醐味だろう。
そんな感慨に耽っていると、列車はゆっくりと動きだし、黄金色のライトに照らされたホームから夜の闇に包まれて行くのだった。

翌朝、ドアを叩く音で目が覚めた。
給仕の男性が朝食を運んで来た。
なんとこの寝台車、車両に1人ずつ給仕が付き、夕食と朝食の食事の用意とベッドの支度などお世話してくれるのだ。
彼は初老の男性だったが、これまで幾多の旅行者のお世話をしてきたからか、おはようや、ありがとうと言った簡単な日本語も喋る事が出来た。

時刻は午前6:00、朝食はパンとジャムぐらいの簡単な食事だったが、昨夜の車内の食事から何も食べていなかったので美味しく感じた。
もうすぐルクソールに到着するとの事。
歯科医の彼はそこで下車するんだろうか。
実は昨夜、彼は心配して部屋まで様子を見に来てくれたのだ。
なんていい奴!感動する僕にニコリと笑って自分の部屋に戻って行ったのだった。

列車は朝日を浴びて黄金色の大地を駆け抜けてゆく。
南北の縦断はほぼナイル川沿いを通る為、雄大な流れを見ながらの乗車は感動も一入だった。

途中、アラビア文字で読めない小さな無人駅を幾つも通り過ぎていく。

うす汚れた車窓は過ぎゆく喧騒の風景をフィルムのように映し出していた。

朝食を済ませてから5時間、それまでの牧歌的景観から都会の様相に変わってしばらくするとアスワンの駅に到着した。

実質、飛行機だとカイロ~アスワン間は1時間程度で効率的に移動出来る。
航空券代も時期にもよるが数千円程度だろう。
それに比べたら寝台列車の旅は膨大な移動時間に不明瞭な現地の言葉など障害は多く、疲労も桁違いだ。
ただし、それを越える程の人とのふれあいや経験、車窓からの風景がある。
きっとそれは偉大な遺跡や絶景よりも深く心の残るだろう
僕が列車の旅が止められない所以はそんなとこだ。
って事で次回はアスワンの街へGO!

Ramses Railway Station
エジプト 〒4320330 カイロ県 Al Azbakeya, Al Fagalah