極彩色のレリーフは歴史を物語る

こんにちは。放浪のバックパッカー旅すけです。
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世界を股にかけて旅する股旅ブルース。
今回は60を越える王墓が集まるルクソールの王家の谷に潜入します。極彩色に彩られたレリーフや墓室はエジプト繁栄の証でした。

王墓が集結する王家の谷。ルクソールで壮大なお墓参り。

意外に思うかも知れないが、僕はお墓参りが嫌いではない。
宗教的な信仰心はあまりないのだが、小さい頃に祖母に連れられて頻繁に来ていたせいか大人になった今も、実家に帰省する旅に参るようにしている。
今や一種の義務感に似た物があり、お墓参りしないと変な気持ちを感じてしまう程だ。

そんな僕だが、古墳とか墓所にはあまり行った事がなかった。
そこが壮麗な寺院だったり太古の遺跡ならば話は別だが、墓自体には興味が湧かなかったのだ。
しかし、ここエジプトのルクソールには紀元前から君臨したファラオ(王)たちの霊園があるらしいのだ。
しかも、世界で最も有名なフォラオ、ツタンカーメンの墓もあるとか。
財宝に囲まれた不肖の王の墓!それはもう行くっきゃないじゃないかっ!!
跳ねる気持ちを抱えながら早速、ルクソールに赴いたのであった。

ルクソールはナイル河沿岸にあるエジプト第3の都市。
対岸から気球の光景や夕陽が眺められる美しい街だ。
かつて古代都市テーベが繁栄していた事でも有名で、そこには数々の神殿や墓所の跡地が世界遺産として残されている。
河を挟んで東側にはカルナック神殿やルクソール神殿、西側にはハトシェプスト葬祭殿や件の墓所である王家の谷があった。
前日にアブシンベル神殿を見て、そのままアスワンから列車に飛び乗る事4時間、ルクソールに着いたのは夜8時を回った所だった。

翌日、頼んでいたガイドとホテルのロビーで落ち会うとチャーターした車で出発した。
本日は王家の谷ハトシェプスト葬祭殿カルナック神殿ルクソール神殿と1日周遊の予定。
ガイドは日本語が堪能なエジプト人、ムハンマド。
『ハマちゃんと呼んで下さ〜い』と海外ガイドにありがちな寒い掴みをかまして来た。
うん、呼ばないかな。
このガイド、かなりくせ者で話好きなのか、車中のトークが止まらない。
こちらが話に辟易して来た頃、王家の谷に到着した。

世界で最も有名なファラオ、ツタンカーメンの墓は1LDK!?

王家の谷は広大な岩山の谷にある岩窟墓群で、現在までに24の王墓を含む64の墓が発見されている。
新王国時代のほとんどの王墓が盗掘に遭っていたことから、その後の王たちは自らの墓を隠す目的でこの地を埋葬場所として続々と選ばれたらしい。
しかし、その後も盗掘を受けたのだが、現代まで唯一未盗掘で副葬品の財宝がほぼ完全な形で残っていた墓があった。
それこそが世界で最も有名なフォラオと呼ばれるツタンカーメンの墓なのだ。ツタンカーメンの墓だけがなぜ盗掘から免れたのか、諸説あるが墓建設の為の作業小屋下にあって発見されなかったからだとか。
若くして亡くなった不世出の王は死して歴史に名を刻む事となったのだ。

王家の谷の入場料は240EGP(約1,680円)
これを支払えば数ある王墓のうち、3ヶ所を見学出来るのだが、大人気のツタンカーメン含む一部の墓は別料金なのだ。
エジプト政府め!上手い事やりやがる。
しかもツタンカーメン王墓の入場料はなんと300EGP(約2,100円)!!
入場料より高いじゃないかっ!震える拳を抑えつつ、王墓に向かうのだった。

それでは早速ツタンカーメン王墓に行ってみるとしよう。
王墓は中央広場に来ると右手、カフェや土産屋の反対側にある。

入口には簡素な看板にツタンカーメンと書かれている。
チケットを見せるといよいよ突撃だ!
薄暗い階段を下ると小さな部屋が2つ並んでいる。

なんだか砂漠の盗賊になった気分。
部屋の壁には一面象形文字や神様の絵で埋め尽くされていた。

煌びやかではないけれど、一種神秘的で到底墓とは思えない空間。
そんな小部屋のひとつに大きな柩が鎮座していた。

この中にツタンカーメンが眠っていたのか。
何百年もの間、財宝に囲まれて歴史の影に潜んでいたんだろうなぁ。
反対側の部屋には、本物のツタンカーメンのミイラが展示されている。
黒く乾燥したその顔はなんだか悲しげでもあり、笑っているようでもあり。
毎日何百人もの観光客に撮影されてミイラはどう思ってんだかなぁ。

神か人か。死後の世界はレリーフが物語る。

王墓はあと3ヶ所見学出来るとの事で、ムハンマドおすすめ墓所に行ってみる事にした。
まずはラムセス1世の墓へ。

こちらもツタンカーメン程ではないが人気のため、観光客で混雑していた。
ここは1部屋だけの造りだが、壁画が最も鮮明に残っており当時の死生観を垣間見れる。

中でもオシリス神やトト紳の壁画は大きく描かれ、信仰の高さが伺えるのだ。

それにしても真ん中の柩はデカすぎだ、ベッドならキングサイズだな。王様だけに。

お次はラムセス3世の墓
こちらは長い長い回廊が有名。

壁画に彩られた通路はまるで異世界に旅立つよう。
突き当たりは階段になっており両側に柱が聳える立体的な造りが珍しかったり。

細かい象形文字は長年の風化で劣化しているが、その精巧さは紀元前とは思えない程緻密だ。

最後はラムセス9世の墓

トンネル型の内部には古代文字ヒエログリフにてラムセス9世の在位期間や死後の世界を表現

入口には大きく太陽神ラーが描かれ死せる王と一体化し昇天する姿が延々と続く。

それは『ラーの連祷』と呼ばれ、なかでも通路上や奥の玄室天井に描かれたヌト女神がラーを飲み込む絵はその威厳を示すようで興味深い。

ファラオたちの王墓が隠された王家の谷。
数ある中から4つを周ったけれど、どれも壁画が鮮やかで数百年前に造られた物とは到底思えない。
しかしどの王墓も意外と狭いんだなぁとゆう印象。
さながら1LDKぐらいだろうか。
渡辺篤だったら、“これはまた神秘的なお宅ですね〜”建もの探訪で解説している事だろう。なんて事を考えながら古代エジプトに思いを馳せるのであった。

王家の谷
وادي الملوك
Luxor, ルクソール県 1340420 エジプト
مركز الأقصر، محافظة الأقصر 1340420

http://www.sca-egypt.org/eng/SITE_VOK.htm