重厚な巨柱の列はカルナック神殿の目玉

こんにちは。放浪のバックパッカー旅すけです。
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今回はルクソールの人気遺跡、ハトシェプスト女王葬祭殿とカルナック神殿を旅します。2つの遺跡は似て非なる物。その謎の答えは聖域に残されていました。

葬祭殿とは何なのか??謎の遺跡と男装ファラオの伝説

“葬祭殿と神殿の違いはナンデショーカ??”
そんな質問を不意に投げかけられて息を呑んだ。
高校の頃、3階にある教室の窓際席からは中庭の様子がダイレクトに見下ろせた。
艶やかに咲く桜やキラキラ映える池の水面が美しく、小鳥の囀りが聞こえる春先なんかは正にユートピアだった。
つまらない授業中はいつもその誘惑に負けてぼんやりと眺めてしまうのだが、そんな時突如教壇から投げかけられたような記憶が鮮明に甦ってきた。
葬祭殿と神殿の違い?ソーサイデンてなんだ?神殿て何するとこだ?
ドギマギしているとガイドのムハンマドが間髪入れずにのたまって来た。
“葬祭殿は王の葬儀や礼拝のために建てられた祭殿で、神殿とは神様を祀った建物デース。”
ものすごいドヤ顔で睨まれた。
くそーっムハンマドめ!熱心にガイドしてくれるのは有り難いが、たまにミステリーハンターのように当ててくる。
しかも話が長い!勉強嫌いな僕にとっては少々退屈でもあるのだ。

さて、件の葬祭殿と神殿についてだが、なぜそんな話になったかと言うとここルクソールには数多くの遺跡が残り、中でも人気なのがハトシェプスト葬祭殿カルナック神殿なのだ。
ナイル河を挟んで東西に位置するこの遺跡は世界遺産に登録され市内の他遺跡群と共に1日で周遊できる。
早朝より王家の谷を見学した後は5km南下した場所にあるハトシェプスト葬祭殿に向かった。

ハトシェプスト、何やら聞き慣れない名前だが、恐竜ではない。
長崎のご当地グルメ、ハトシロールとは何の関係もない。
ハトシェプストとは古代エジプト王朝の女王である。
エジプト初のファラオとなった彼女は、その権威を誇示する為、公式の場ではあごひげをつけ、男性の衣装を纏っていたとか。
そんなハトシェプスト女王がアメン・ラーを祀って建立したのが葬祭殿である。
切り立った崖下に建設された祭殿は中央の祭壇に向かって傾斜路が作られ3層からなるテラスが左右に広がる形になっている。
重厚な門構え内部に造られた祭壇室は天井がドーム型になっており神事の跡が残されていた。

かつては男装したハトシェプストの像やレリーフが並んでいたそうだが、彼女の死後破壊されたそう。

現在は入り口にアヌビス神ホルス神の像や壁画を見る事が出来るのだ。

テラスに並ぶ巨像群は圧巻の一言に尽きる。
更に1階部分の両翼には神格化されたファラオや動物達の壁画が残る。

天井に記された翼の生えたスカラベ(フンコロガシ)はその神秘的な習性から太陽神と同一視され崇拝された。

糞を転がす姿が復活の印だなんて、信仰とは本当に面白い。

圧倒的な男性社会の中で女王がいかに強くその時代を築き上げたか、朽ちた葬祭殿は永く物語るようだった。

巨大列柱祭りじゃ~。カルナック神殿に漂う栄華の名残

ハトシェプスト女王葬祭殿を後にすると、次はカルナック神殿に向かう。
しかし、酷暑期のエジプト、日々うだる暑さの為か、この頃から熱っぽさを感じていた。

カルナック神殿はナイル河を挟んで東側に位置する。
葬祭殿からは一度南下して橋を経由する行程の為、1時間程度の所要時間である。
ここでもムハンマドの饒舌さは絶好調であった。
エジプトの歴史に始まり、自身の家族やこれまでの経歴まで包み隠さず話してくれたが、
頭痛いから少し静かにしてくれーっ!と心の中で願うのであった。
ようやくカルナック神殿に着いた頃は太陽も絶好調で照らす気マンマン。
エジプトの皆さ〜ん、やりすぎですよー!!

カルナック神殿は、かつて繁栄を極めた古代都市テーべに建造された神殿複合体である。
神殿複合体なんて聞くと重苦しい神事をイメージするが、要するに大小様々な神殿や礼拝堂を集めた場所なのだ。
その大きさたるや1平方キロメートルにも及ぶ。
周囲を泥煉瓦で囲まれ、無数の神と神話で覆い尽くされた巨大神殿は今や永きに渡る歴史によって廃墟と化している。
しかし、破壊された列柱やオベリスクが残る聖域には栄華の残り香が今でも漂っているかのようだった。

まず入口へのアプローチは無数のスフィンクス像が立ち並ぶ。
神話の怪物と呼ばれたスフィンクスたちは所々頭部が破損しているが、数千年を経た今でもその獰猛さで立ち入る者を威嚇している。

既に壁となった神殿入口を抜けると圧巻の列柱室に入る。
これこそがカルナック神殿の真骨頂、大人6〜7人が手を広げてやっと一周する程の極太列柱が132本も並ぶのだ。

恐らく、この場所はTVCMや映画などで幾度となく撮影された事であろう。

柱周りには古代レリーフが今も残る。
柱の波は幾重に重なり神殿奥に誘われるかのような既視感を覚えた。

これ程までの柱をどうやって造ったのか、どうして造ったのか、次々に視界に入る柱の列に古代神殿への思いを馳せるのだった。

列柱を過ぎると礼拝室がある。

途中、右手にはオベリスクやスカラベ像が残っているが、通路の壁は著しく破損し、かつての姿は見る影もなくなっていた。

ローマ時代の略奪や破壊は相当凄まじかったのだろう。
頭部が欠損した孤独な像を見ると盛者必衰の理を感じずにはいられなかった。

“カルナック神殿とハトシェプスト葬祭殿はいかがでしたか?”
“う〜ん、神殿と葬祭殿の違いはよくわからなかったけど、列柱とか巨像とかすごくてコーフンしたよ。”
“それはヨカッタです。この後はルクソール神殿に向かいマース!”
“そこなんだけど、実は体調が悪くて今日はもうホテルに送ってくれないかな?”
“Oh〜、それは大変デース!すぐにホテルまでお送りしマース!けど、、この後ジュエリーのお店に寄る予定ですが大丈夫デスカ??”

行くかっ!!行くわけねーだろ!!

カルナック神殿
الكرنك
エジプト Luxor Governorate, Luxor, カルナック
☎+20222617304/6:00~17:30
http://www.sca-egypt.org/eng/SITE_Karnak.htm