こんにちは。中年バックパッカー旅すけです。
いつも股旅ブルースをお読み頂きありがとうございます。
世界を股にかけて旅する股旅ブルース。
今回の旅はインド洋の真珠と呼ばれるスリランカ。
アラフォーバックパッカーのアジア珍道中をお楽しみ下さい。
スパイスよりも奥深い。夢のスリランカ旅へ
福岡市の天神に有名なカレーの店がある。
そこは都心の真っ只中でいつも混雑していた。
友人に誘われて初めて訪れたのが恐らく20年も昔の学生時代だった。
それまでカレーと言えば、ライスの上から茶色のルゥをかける欧風カレーと呼ばれる物か、小麦粉を伸ばして焼いたナンをチキンカレーにつけて食べるインド風ぐらいしか知らなかった。
そこで出されたカレーはそれまで見た事ないようなオレンジ色に染まっており、スープのようにさらさらと真ん中に鎮座したライスの周囲を揺蕩っていたのだ。
そして大きく刻まれたじゃがいも、鶏肉、豆カレーが三方向に配置され、
平たい皿の中で家紋のようなデザインを構成していた。
シルバーのスプーンで少しずつ混ぜて食べると口いっぱいにスパイスの香りが広がるのだが、
ココナッツミルクのまろやかで優しい後味。
だけど、チリペッパーの辛味は存分に発揮され後引く美味さだった。
ココナッツがこれほどまでにスパイスの荒さを柔らかくしてくれるとは衝撃の味だった。
それが僕とスリランカカレーの出会いだった。
それ以降、僕はスリランカカレーに心酔してしまったのだ。
一言でスリランカカレーと言っても多様な形が存在する。
基本的な物としては、北インドのカレーと違い、ココナッツミルクや魚を使い煮込む事、
ひと皿に数種類のカレーや副菜を添えて、ライスと混ぜて食べる事である。
その後もその店には足繁く通い、スリランカカレーと聞けば様々食べ歩いた。
いつしか思うようになった。いづれ本場のスリランカカレーを食べてみたいと。
念願のスリランカ旅行を決めたのは初めてスリランカカレーと出会ってから10年以上も経過した頃だった。どうしてそんなに時間がかかったかって?なんせ世界には僕の好奇心を擽る国が山ほどあるのだ。
インド洋に浮かぶ島国をどうしても後回しにせざるを得なかったのだが、改めて調べてみるとそれが大きな間違いだったと気付かされた。
雄大な大自然に崇高な仏教寺院、美しい建築物。
カレーだけではない素晴らしい魅力に溢れた国だったのだ。
今回の旅は首都コロンボからシギリヤ、古都キャンディ、山間の町エッラ、自然豊かなヤーラ、海岸沿いのアフンガラまでを9日間で周遊。移動は車、バス、電車とバックパッカー御用達のローカル公共交通機関で移動した。
旅の初日、ネゴンボにあるバンダラナイケ国際空港に到着したのは早朝5時頃だった。
福岡から大韓航空で仁川経由で入国。途中、トランジットでソウルのタッカンマリ食べたり、スパでのんびりしたり。
仁川経由はこれがあるから嬉しい。
トランジットて旅が始まる前の前夜祭みたいな感じでテンションMAXになるぜ!
明朝にも関わらず空港のSIMショップには長蛇の列が出来ていた。
早々に購入し、空港前で予約していた現地ツアーのドライバーと落ち合う。
今日はシギリヤを周遊してキャンディまで送ってもらう予定だ。
スリランカ人ドライバーは名前がアキラと言うらしい。
アキラ?いかにも日本人らしい名前。彼の両親が以前日本に滞在していた為、日本に由来するアキラとゆう名前を頂いたらしい。しかもスリランカでもアキラと言う名前は意外とオーソドックスらしいのだ。
日本から遠く離れたインド洋の島国でアキラに会えるとは、中尾彬も喜ぶだろうな。
北東に向けて車が出発すると程なく都市部を抜け、山間部に入ってくる。
道路沿いには木造の家屋や商店が見られ、地元の人たちの勤しむ姿が垣間見れた。夜が明け始めると南国特有の木々や河川が朝日に包まれ、絵画のような美しい景観を作り出す。朝の風景はどこに行っても癒されるものだと車中からぼんやり眺めながら思いに耽るのだった。
空港出発から数時間後、車は道路横の駐車場に停車した。
そこは山間部の広大な敷地が切り開かれ、森林や家屋が点在していた。
聞くとここは孤児院だとゆうのだ。えっ孤児院!?こんな山奥に?そう、ここは人間の孤児院ではなく、象の孤児院。あの巨大な象に孤児がいるのかと思う方も少なくないだろう。
なんせ、日本の動物園やテレビで見る小象達は必ずと言っていい程、親象と連れだっているイメージだ。
しかも戦時下ではない。ここピンナワラでは親とはぐれたり、亡くしてしまった小象を保護して自然に近い中で育てているだ。
以前は3万頭ものアジアゾウが生息していたスリランカも森林の伐採や狩猟などで激減し、現在は絶滅危惧種に指定されるまでになった。
その減少を食い止める為に1975年に設立されたのがここ象の孤児院である。
園内には100頭以上ものアジアゾウが生活し、時間によっては水浴びの姿を見学出来たり、ミルクや餌やり体験もあってか観光客だけでなく地元の人にも愛される施設なのだ。
開園直後の時間だったためか象達の水浴びは見れなかったが、敷地内で戯れる姿を見れたり餌をあげたり貴重な体験だった。動物と触れ合うのは生態形を実感出来る事もあるが、本当に癒される。施設は公園のような作りの為、自然の中をプラプラとピクニック感覚も味わえるのだ。
ふと見ると広場や象の敷地から離れた所に鉄筋の小屋が建っていた。小屋と言っても四方は解放され支柱と屋根だけの簡素な造りで陽も入らず明らかに異質な感じだった。鉄筋の小屋からは鎖を擦る音やバシンバシンと打ちつける音が聞こえてきた。よく見ると、一頭の象が両足を鎖に繋がれ、身じろぎしながらその体を支柱に体当たりしていた。暴れ馬ならぬ暴れ象だろうか、鎖を断ち切ろうとしてもがいているようだった。その光景は物悲しくも集団からはぐれた孤独な象の姿を写し出していた。
元は孤児だった象たち。
身寄りは出来たけど、馴染めない者だって必ずいる。
あの象もまた鎖を断ち切って自由に生きて行きたかっただろう。
そんな姿を見ていると、一人旅する自分と重なって親近感を感じずにはいられなかった。
スリランカの夜明けに孤独な象の咆哮が響き渡るのだった。
今回も股旅ブルース、最後までお読みいただきありがとうございました。
次回、39話 シギリヤロックと天空の城
をお送りします。
ピンナワラのゾウの孤児園
Elephant Orphanage
B199, Rambukkana 71100 スリランカ
☎+94352265284/8:30~17:30
http://nationalzoo.gov.lk/elephantorphanage