こんにちは。中年バックパッカー旅すけです。
いつも股旅ブルースをお読み頂きありがとうございます。
世界を股にかけて旅する股旅ブルース。
前回まで、メルズーガ近郊の小さな市場で大量のスパイスを買ってしまい車中で異臭騒ぎを起こしてしまう中年バックパッカーなのでした。
今回はメルズーガからサハラ砂漠のキャンプまで向かいます。
巨大な砂丘と静寂の空気、サハラ砂漠をラクダに揺られて
メルズーガ近郊の市場を出発したのは正午を過ぎた頃。500グラムのスパイスは思いのほか、芳醇な香りを放ちながら鞄の中で窮屈そうにその身を潜ませていた。
途中、ドライブインにて昼飯を取る。いつものようにモロカンサラダとケフタのタジンだ。
ケフタとはモロッコのミートボールの事。イスタンブールの旅でキョフテを書いたがよく似ている。
ラムの挽肉にクミンやパプリカを混ぜ合わせ肉団子状にしたもので中東の国々ではクフタともカフタとも呼ばれる。成形した肉団子はトマトソースと煮込まれ、最後に卵を真ん中に落とせば出来上がりである。
スパイスの効いたミートボールとトマトソースの甘みがよく合う。
肉汁も味わい深く、残ったソースにはホブスをまぶして綺麗にたいらげた。
遅めの昼食を済ませた後はサハラ砂漠の拠点となるオーベルジュまで向かう。
道は段々と荒野になる。真っ青な空に灰色のアスファルトと黄褐色の大地の単調な風景が延々続いてゆく。途中、ジュラーバを着たモロッコ人が孤独に歩いていたりすると、あの人はこの果てしない大地のどこに向かっているのか、帰る家はどこだろうかなど、車窓をぼんやり眺めながら考えたりした。
退屈な景観にウトウトと微睡みはじめた頃、運転席のアマールの声で目が覚めた。“砂丘だ”
見るとフロントガラスの目の前に巨大な山が現れていた。
それは大地と同じく黄褐色で丘と呼ぶには小さく、正に山のようだった。
更に近づくにつれ、同じような高さの山が四方に現れ始めた。
僕は寝ぼけた頭で“山だろう”と聞くと、“いや、山じゃない。砂だ。”とアマールが素っ気なく答えた。
なんとそれは山ではなく、やはり砂だと言うのだ。これ程までに巨大な砂丘があろうか。
近づけば近づく程、大きくなり見上げる程の高さになった。言われてみればその黄褐色は砂が太陽に照らされて写った色だった。
日本には鳥取砂丘があるが、高低差は90メートルらしい。サハラ砂漠の砂丘は高いものだとなんと150~200メートルもの高さになる為、その比ではない。改めて大自然の迫力を目の当たりにした。
オーベルジュに到着すると、ベルベル人の砂漠ガイドが出迎えてくれた。
砂漠のキャンプまではラクダで向かうという。待っていると、1組の老夫婦が現れた。
どうやら彼らとキャンプを共にするらしい。夫婦はフランス人でキャンピングカーでモロッコを巡っていた。夫のマルタンは人懐っこくやたら話しかけてくる。マダムは足が悪い為、杖をついていたが、まだまだ元気よ、と意気揚々だった。楽しいキャンプになりそうだ。
ラクダの準備が出来ると、3頭が連れられて来た。先頭のラクダがしゃがむと、ガイドが手招きした。少しコツがいるが足をかけてヒョイと乗るとラクダが立ち上がった。思いの外高さがある。2頭目にはマルタンが乗った。マダムは乗れないため、先にバギーでキャンプまで向かう事になった。ガイドが手綱を握ると出発である。
目の前に広がる広大な砂漠は褐色の色を放ち異世界のような空間を作り出しているようだった。
この世界には音がない、風もなく、ただラクダが砂を踏み締める小さな音が微かに耳に響くだけ。芒漠とは正にこの事で、地平線のはるか彼方まで砂漠地帯が広がっていた。
風で造り出された砂の波は大地に陰影を作り茶色と黒の模様を幾重にも織りなしていた。
砂漠と聞くと灼熱の太陽を思い起こすが、熱波とゆう程の事もなくじっとりとシャツを湿らせる程度。ラクダの揺れも相まって不思議と心地よかった。
40分程進んだ頃だろうか、巨大なすり鉢状に窪んだ砂地に到着した。まるで蟻地獄のようになだらかな傾斜を描いており中心部にはいくつかのテントが設営されていた。ベルベル人のガイドは指差すと、そのまま斜面を勢いよく下った。本日の宿泊地デザートキャンプが砂漠の中でひっそりと立っていた。
今回も股旅ブルース、最後までお読みいただきありがとうございました。
次回、33話 サハラ砂漠に降る一億の星
をお送りします。
Desert Sand Camp
Merzouga, モロッコ
مرزوكة
☎+212650536151
http://www.cameltripmorocco.com/