こんにちは。放浪のバックパッカー旅すけです。
いつも股旅ブルースをご覧頂きありがとうございます。
世界を股にかけて旅する股旅ブルース。
前回に引き続きニューデリーの旅をお送りします。悪徳業者の旅行ツアーでオールドデリーに向かうも、更なる曲者たちが襲いくるのでした。
栄華の極み!ラール・キラーはムガール帝国の赤き彗星かっ!
これまでの旅の記録をそこはかとなく書き綴ってきた股旅ブルースもなんと100話を迎える事となった。
これもひとえに長らく読んで下さる読者の皆様のおかげです。
これからも股旅ブルースをよろしくお願いします。
さて、前回インドのニューデリーはパハールガンジであえなく騙され、近郊の観光地を巡るツアーを組まされた中年バックパッカー旅すけ。
悪徳旅行会社を辛くも脱出して一路、オールドデリーに向かうのであった。
オールドデリー。ニューデリーの中でも古くからある市街地区で建物や商店も老朽化が目立つ街並み。
しかしそここそ、混沌と猥雑が同居する正にインドたる場所。
リキシャーや大量の食糧を山積みした荷車が横切ったかと思えば、のそりのそりと野良牛も徘徊する。
道端には物乞いかと思いきやサドゥが鋭い眼光を光らせていたり、鼻をつくスパイスの匂いとが漂い、けたたましいクラクションの音が鳴りやまない。
体中の五感をすべて刺激する街こそ、オールドデリーなのだ。
そんなオールドデリーにはチャンドニーチョークと呼ばれる通りがある。
無数の商店が並び、日々人でごった返す通りは、オールドデリー最大の繁華街として知られている。
その先にあるのが世界遺産ラール・キラーだ。
赤砂岩で作られたその真紅の砦は別名「レッドフォート」とも呼ばれている。
かつてムガール帝国皇帝シャー・ジャハーンの首都遷都に伴い9年の歳月をかけて建設された城砦は、現在ではオールドデリー観光の目玉として多くの旅行者を惹きつけている。
旅行会社の車は入場口近くの駐車場に停まった。
ドライバーはここで待つらしく、僕は1人で向かうのだった。
眼前には遥か先まで続く城壁が迫り、見上げる程の城門が待ち構えていた。
ラホール門と呼ばれる門塔はかつてパキスタンへと続く道として造られたらしい。
城内に続く道が大きなカーブを描き城の奥へと伸びている。
入場料を支払うと他の観光客の流れに沿って進むのだが、この頃からポツリポツリと肌にあたる雨を感じていた。
なんだかひと雨降りそうな予感だな。
ムガール彫刻美しい壮麗な城門を抜けるとそこは広々とした静かな庭園になっていた。
緑豊かな木々や綺麗に刈られた芝生は、オールドデリーの喧騒を忘れて少しだけ癒される。
中庭の中央門に来た頃だろうか、驚くほどの雷鳴と共に、バケツをひっくり返したような豪雨に見舞われた。
それは正に嵐か、台風のようで、日本では遭遇した事がない程の雨量が突然発生したのだ。
近くにいた旅行者は皆、小さな中央門の下で雨やどりするのだが、いかんせん狭く押し合いへし合いの大混雑。
しかも雨は横殴りのためか、両端にいた人々はほぼずぶ濡れの状態だった。
それにしてもインドの雨季は凄まじい。
タイやマレーシアの雨季とは比較にならない程の雨が数十分続いたのだった。
小降りになった頃、僕は思い切って門外に踏み出し、玉座の間に向かった。
床は既に濡れて所々に水溜りが出来ているが、歩けない程ではない。
玉座は真っ赤な城に白亜の大理石で造られ、ムガール帝国の全盛時代を思い出させるかのよう。
さすが皇帝シャー・ジャハーン、タージ・マハルを造っただけあって美しくも豪華絢爛な様式デザインをここでも取り入れているのだ。
繁栄を極めたムガール帝国の城塞は数百年の時を超えて、栄枯盛衰を今に伝えているのだろう。
ラール・キラー
Lal qila
Lal Qila, Old Delhi, Delhi, 110006 インド
インド最大モスク、ジャマー・マスジットの懲りない面々。
オールドデリーにはもうひとつ、有名な観光名所がある。
チャンドニー・チョークを挟んでラール・キラーとは反対側にあるジャマー・マスジットだ。ヒンドゥー教徒と共に多く住むイスラム教徒のモスクだが、ここはなんとインド最大、中庭には25,000人も収容出来るんだとか。
モスクというと煌びやかな装飾とコーランのデザインを想起させるが、ここはシンプルな造り。
ラール・キラー同様赤砂岩の色が際立つ門と礼拝堂はムガール様式も映え重厚で厳かな雰囲気を醸し出しているのだ。
ではでは、モスクに入場しようとした矢先、入口で早速呼び止められた。
なんだなんだ?職質か?聞けば、腰巻きを巻けとの事。
おいおい、無粋な事言うんじゃないよ、ここは猛暑甚だしいインドだぜ、短パンじゃダメなのか?
ダメって?少々高いがしょうがない、巻くとするか。
腰巻きをして入ろうとするとまたも呼び止められる。
えっ腰巻き?いやっ巻いてんだろ、見りゃわかんだろ!
既に腰巻き巻いてるのにまだ勧めてくる恐ろしさ。
なんなんだこいつら、また金かよ!!
中に進むと、知らないオッサンが話しかけてきた。
よく分からない言葉を話しながら、あちらこちらへ連れ回す。
途中では写真撮ってくれたり、礼拝の仕方教えてくれたり。
あらかた終わると、オッサン右手を出してチップを求めてきた。
はっ!?金?いやっ頼んでないだろ!強く断るもオッサン引き下がらない!何度か押し問答するが、根負けして、200ルピー(400円)渡してなんとか収めた。
くそ〜、なんかそんな気はしてたが、どいつもこいつも金金金かっ!
近くで少年たちが笑っているのも余計腹立つぞ!!
マネーと口喧嘩のせいでイラ立ちながらドライバーの元へ帰るのだった。
ホテルへ帰る車中で、僕は一部始終を話した。
無口なドライバーはポツリポツリと話し出し、デリーではなんでも金(チップ)だ、日本人旅行者は特に狙われるから気をつけろと言ってくれた。
なんだあの旅行会社は悪徳だったけど、こいつは案外いい奴じゃないか。
ドライバーは運転しながら、家族の事や日本車の事など色々話してくれた。
デリーの街は大渋滞だったが、あまり気にならずホテルまで連れて来てくれた。
あー、デリーにもこんないい人いるんだなぁ。
僕はさっきまでのイラ立ちを恥じながら、車を降りようとすると、無口なドライバーが最後にこう言ってきた。
“あっお客さん、チップください”
ジャーマー・マスジド
Jama Masjid
Jama Masjid Rd, Jama Masjid, Chandni Chowk, New Delhi, Delhi 110006 インド
☎911123365358/7:00分~12:00、13:30~18:30
17 世紀に建造された赤砂岩造りのモスク。ムガル様式の建物で、収容人数は 25,000 人。
ミナレットの高さは 40 m に及ぶ。